透明水彩における白と黒の考察 ‐後編-
2025.06.20
絵の具における白の役割と種類の違い
子どもの頃、美術の授業で使った不透明水彩では、白のチューブだけが他の色より大きくて、たっぷり使った記憶がある方も多いのではないでしょうか。
不透明水彩では、ほとんどすべての色に白が含まれており、混色しても違和感がなく、ハイライトに白を加えても自然に見えます。アクリルガッシュのような絵の具では、色のついた紙の上に明るい色を重ねるような描き方もできるため、白はむしろ積極的に使われます。
しかし、透明水彩では話が変わってきます。透明水彩に白を混ぜると、せっかくの透明感が失われてしまい、ハイライトに使うと不自然に“塗料をのせたような”印象になってしまいます。
これは、透明水彩の多くの色が非常に粒子が細かく、紙の白を透かして発色するのに対して、白だけは粒子が大きく、顔料そのものの重たさが見えてしまうからです。
白は「描く」のではなく「残す」
では、透明水彩ではどのように白を表現するのでしょうか?
それは、水の力を使って「白を塗る」のではなく、「白を残す」ことです。
淡い色を表現したいときは水で顔料を薄めて密度を下げ、光の当たるハイライト部分は、最初から紙の白を塗らずに残しておきます。
つまり、透明水彩における白は「描く」のではなく「残す」もの。
その潔さと繊細なコントロールこそが、透明水彩ならではの魅力でもあります。
紙の白も、にじみの黒も、すべては水と色の対話の中にあります。
ぜひあなただけの色で、世界を描いてみてください。
画家 櫻井ナン
横浜生まれ。都内在住。
武蔵野美術大学造形学部油絵学科(通信課程/奨学金奨励生)卒業。同大学卒業制作優秀作品に選出。
専門学校桑沢デザイン研究所グラフィックデザイン研究科卒業。
桑沢デザイン研究所研究科在学中から演劇実験室天井桟敷で舞台美術及び美粧アシスタント・宣伝美術担当。
主幹寺山修司氏死去で劇団解散後、グラフィックデザインを主にフリーランスに。
近年の活動
クラゲジルシN-plusサイトにて日本初の絵文字フォント制作、販売及びフィギュア制作
守山乳業デザート・ドリンク等パッケージデザイン
ジャストプランニングwebページ・商品ロゴデザイン
NECパソコンのいろは(PCソフト)チュートリアル キャラクターデザイン
PUZZLING Ghost Treat (iPhone/android)パズルアプリ キャラクター・GUIデザイン
ダイハツ子供向け販促物、自動車ぬりえ等
Panasonic北京五輪 展示パネル各種目イメージイラスト
オノグラフィックス(知育カードゲーム)「のりものえあわせカード」著作
近年の画歴
テンペラ(混合)画で第90回・91回・92回春陽展に入選。
テラコッタ彫刻で第78回・79回新制作展入選。
テラコッタレリーフでサムホール大賞展入選。
六本木画廊企画展「幻想動物園」・「SCULPTORS×POWERS」彫刻出品