今回は、作品を鑑賞することについてお話しします。
人の絵を見に行くことは、とても大切なことだと思います。
「良い絵」「悪い絵」という評価はさておき、自分が「素敵だな」「感動した」と思えたら、それがあなたにとって良い絵なのではないでしょうか。
私がまだ若かった頃、日本画家・高山辰雄の展覧会を観に行き、感動して震えた経験があります。
私は洋画を描いていますが、高山辰雄の描く女性像を油絵の具で模写したこともあります。また、ソフトパステルが好きで、ルドンの花の絵を何度も模写しました。
模写をすることで何が分かったのか、言葉で説明するのは難しいのですが、人の絵を見て感動し、「自分も描いてみたい」と思ったことが、今も絵を描き続ける原動力になっていると感じます。
長年絵を描き続けていると、「この構図が素晴らしい」「この色彩の表現が美しい」など、絵の良さがより具体的に分かるようになりました。
しかし、若い頃は「何が良いのか」「何が心を打つのか」は分からなくても、ただ純粋に感動していました。私は、それでいいのだと思います。
人の絵を鑑賞する中で、「この画家の作品が好き」と感じることが増えていきます。それは、「何が良い、悪い」という基準ではなく、その絵によって心が癒されたり、救われたりするからではないでしょうか。
また、私の場合、年齢とともに好きな絵が変わっていきました。生きている背景によって、惹かれる作品が違ってくるのです。人生を歩む中で、新しいことを知ったり、傷ついたり、さまざまな経験を重ねていきます。その時々で、ある作品が自分の心にスッと入ってくる瞬間があります。そんな絵に出会えたとき、「人生は楽しいな」と感じます。
時々、教室の見学に来られた方が「絵を見るのは好きですが、あまり描いたことがありません。そんな私でも描けますか?」と尋ねられます。私は、「絵を見るのが好き」ということ自体が、ひとつの才能だと思っています。描く環境やタイミングがなかっただけで、きっと心の奥に「描きたい」という思いを持っていらっしゃるのではないでしょうか。
もう一つ、人の作品を鑑賞する際の視点についてお話しします。もし、公募展やコンクールへの出品を考えている場合は、少し見方を変えてみましょう。自分が出品を考えている公募展やコンクールを実際に観に行き、受賞作品をじっくり鑑賞してください。そして、「なぜこの作品が賞を取ったのか」「自分の作品と何が違うのか」「賞を取れなかった作品との違いはどこにあるのか」などを意識して見ることが大切です。
そこには、入選や受賞の要素が必ず隠れているはずです。
世界には数えきれないほどの美術館や博物館があります。
美術品は生きていくために必要不可欠なものではないかもしれませんが、これほど多くの美術館が存在するということは、それだけ人々の心にとって必要なものなのだと感じます。もし心が少し疲れたときは、ぜひ時間を作って美術館に足を運んでみてください。
きっと、心を満たしてくれる作品に出会えるはずです。
田嶋香里