色の不思議 -後編-

2025.07.15
色の不思議

▶ 前編はこちら:「色の不思議 -前編-」

色の錯覚と見え方の不思議

同じ色でも、背景や隣り合う色によって違って見えることがあります。
これは「色の対比」や「色の同化」と呼ばれる現象で、目と脳が補完しているのです。
つまり、私たちが「見ている色」は、その物自体の色ではなく、環境によって大きく左右されているのです。

たとえばグレーの紙を鮮やかな赤の隣に置くと、少し緑がかって見えたり、青の隣では黄色っぽく感じられたりすることがあります。
これは「色の対比」の錯覚で、脳が色のバランスを取ろうとすることで起こるものです。

色を感じる力と表現の深まり

こうした色の性質を理解することは、絵を描くうえでもとても大切です。
たとえば影の部分を「黒」と決めつけて塗ってしまうと、平面的で単調な印象になってしまうことがあります。
実際には、影の中にも紫や青、時には反射光によってオレンジ色が潜んでいることもあるのです。

観察力と色の感受性を育てていくことで、より豊かで深みのある表現が可能になります。

教室では、「ただ見たままを描く」のではなく、「どんな色に見えるか」「なぜそう見えるのか」を一緒に考えていきます。
初心者の方でも、回を重ねるごとに「あっ、こんなところに紫が!」と気づけるようになるのが、とても楽しいのです。

こうした視覚の不思議を知ることで、色は単なる“物質”ではなく、「関係性の中で成り立っているもの」だと気づかされます。
絵を描くときには、こうした色と色の「関係性」も、大切な表現の一部になるのです。

色の不思議を体感していく中で、絵の見え方も、この世界の見え方も、少しずつ変わってくるかもしれません。

▶ 前編はこちら:「色の不思議 -前編-」

画家 櫻井ナン

画家 櫻井ナン

横浜生まれ。都内在住。
武蔵野美術大学造形学部油絵学科(通信課程/奨学金奨励生)卒業。同大学卒業制作優秀作品に選出。
専門学校桑沢デザイン研究所グラフィックデザイン研究科卒業。
桑沢デザイン研究所研究科在学中から演劇実験室天井桟敷で舞台美術及び美粧アシスタント・宣伝美術担当。
主幹寺山修司氏死去で劇団解散後、グラフィックデザインを主にフリーランスに。

近年の活動

クラゲジルシN-plusサイトにて日本初の絵文字フォント制作、販売及びフィギュア制作
守山乳業デザート・ドリンク等パッケージデザイン
ジャストプランニングwebページ・商品ロゴデザイン
NECパソコンのいろは(PCソフト)チュートリアル キャラクターデザイン
PUZZLING Ghost Treat (iPhone/android)パズルアプリ キャラクター・GUIデザイン
ダイハツ子供向け販促物、自動車ぬりえ等
Panasonic北京五輪 展示パネル各種目イメージイラスト
オノグラフィックス(知育カードゲーム)「のりものえあわせカード」著作

近年の画歴

テンペラ(混合)画で第90回・91回・92回春陽展に入選。
テラコッタ彫刻で第78回・79回新制作展入選。
テラコッタレリーフでサムホール大賞展入選。
六本木画廊企画展「幻想動物園」・「SCULPTORS×POWERS」彫刻出品