同じ色でも、背景や隣り合う色によって違って見えることがあります。
これは「色の対比」や「色の同化」と呼ばれる現象で、目と脳が補完しているのです。
つまり、私たちが「見ている色」は、その物自体の色ではなく、環境によって大きく左右されているのです。
たとえばグレーの紙を鮮やかな赤の隣に置くと、少し緑がかって見えたり、青の隣では黄色っぽく感じられたりすることがあります。
これは「色の対比」の錯覚で、脳が色のバランスを取ろうとすることで起こるものです。
こうした色の性質を理解することは、絵を描くうえでもとても大切です。
たとえば影の部分を「黒」と決めつけて塗ってしまうと、平面的で単調な印象になってしまうことがあります。
実際には、影の中にも紫や青、時には反射光によってオレンジ色が潜んでいることもあるのです。
観察力と色の感受性を育てていくことで、より豊かで深みのある表現が可能になります。
教室では、「ただ見たままを描く」のではなく、「どんな色に見えるか」「なぜそう見えるのか」を一緒に考えていきます。
初心者の方でも、回を重ねるごとに「あっ、こんなところに紫が!」と気づけるようになるのが、とても楽しいのです。
こうした視覚の不思議を知ることで、色は単なる“物質”ではなく、「関係性の中で成り立っているもの」だと気づかされます。
絵を描くときには、こうした色と色の「関係性」も、大切な表現の一部になるのです。
色の不思議を体感していく中で、絵の見え方も、この世界の見え方も、少しずつ変わってくるかもしれません。